森に落ちる那智の大滝と朱塗りの三重塔
熊野三山・那智

熊野那智大社 ― 那智の大滝を仰ぐ聖地

朱塗りの社殿が鮮やかな熊野那智大社は、熊野三山の聖地のひとつとして篤く信仰されてきました。「熊野造り」と呼ばれる独自の建築様式の本殿が五棟立ち並び、主祭神には熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)が祀られています。宝物殿には、国の重要文化財に指定される熊野権現曼荼羅や熊野那智大社文書など、熊野信仰の歴史を伝える品々が展示されています。

那智の大滝 ― 落ちる水そのものが神

那智大社の信仰の原点は、社殿ではなくそのものにあります。原生林におおわれた妙法山の中腹から、一筋の白い輝きが垂直に落下する――それが天つ水と仰がれる那智の大滝です。花山院は「石走る滝」と詠みました。熊野三山のなかでも、この滝はとりわけダイナミックに参拝者の心へ飛び込んできます。黒潮に乗ってやってきた古代の人々の目をひき、そこに聖なる力が宿ると見なされたに違いありません。今日ではパワースポットとして、この滝を目指して訪れる人も少なくありません。

大門坂の石畳

那智の滝の近くにある大門坂(だいもんざか)は、うっそうとした杉木立のあいだを、苔むした石畳が続く道です。熊野古道を紹介する書籍や写真に、名所として数多く取り上げられてきました。一歩ずつ石畳を踏みしめて登る時間は、現代の旅人にとっても、聖地へ近づく心の準備の時間となります。

那智山という総称

「那智山」とは、大雲取山(966m)、烏帽子山(871m)、光ヶ峯(688m)、妙法山(750m)を総称したものとされます。古い文献では妙法山を「那智山の第一峰」と記す例もあり、この地域には子どもが泣くと妙法山を指して泣きやませる風習も伝わりました。信仰と暮らしが分かちがたく結びついていたことがうかがえます。

主祭神

第一殿(滝宮)に大己貴命、第二殿(証証殿)に家都御子大神、第三殿に御子速玉大神、第四殿(本殿・西御前)に熊野夫須美大神、第五殿(若宮)に天照大神を祀り、隣接して如意輪観音を本尊とする青岸渡寺が神仏習合の歴史を今に伝えています。滝と社と寺が一望される光景は、まさに熊野信仰の縮図といえるでしょう。(参考:向陽書房『熊野古道 中辺路と大辺路』)詳細は熊野那智大社(ウィキペディア)もどうぞ。